人民参審員の参加する合議体の構成を定めている条文は決定第3条しかない。なお、人民参審員と合議体のその他の成員との意見が分かれた時、人民参審員の意見を評議の記録に記入し、また、人民参審員が当該事件の裁判委員会による検討決定が必要だと思った場合、人民法院の院長に事件の裁判委員会への付議を要求するよう届け出、かつ、その理由を説明し、それを評議の記録に残さなければならない。......
2023-08-14
本稿の第3章で論じたように、今回の制度改革が開始された2005年から現在にかけて、「決定」および最高人民法院が公布した制度に関する規則等は次々に施行され、制度に関する規定は以前よりも詳細かつ豊富になっている。このため、人民参審員制度の完全化はより一層進展をしていると考えられる。だが、制度改革は現在もなお続けられており、現行制度の実施と共に、人民法院の主導する試験的なものである現行制度を再度改正する作業が2008年には開始された。
2008年3月に、江蘇省蘇州市呉中区基層人民法院は最高人民法院による慎重な選抜を経て、制度の再改革を試験的に行う人民法院として、当該人民法院における制度の実施状況に基づいて、現行制度の法律と規則を遵守した上で、制度構造の刷新を試験的に行うという任務を受けた。2010年5 月、呉中区基層人民法院が人民参審員制度を実施する先進的な人民法院として選出され、当該人民法院で制度を運用する方式が「呉中モデル」と称され、当時の最高人民法院院長である王勝俊によって高く評価された。この方式は次々と新聞やニュースに掲載され、宣伝されることとなった[12]。
現在、「呉中モデル」の詳細な内容は公開されておらず、またそのために、この方式をめぐる研究も殆ど存在していない。2012年に筆者は呉中区基層人民法院に赴き「呉中モデル」の実施状況を現地調査で明らかにしようとしたが、現地調査の要請が当該人民法院に拒まれたため、調査ができなかった。そこで、当該地方に位置する蘇州大学に務めている教師である友人を通じて、2012年11月16日に呉中区基層人民法院の内部に通達された、[蘇州市呉中区人民法院人民陪審員工作規程(試行)](以下、「呉中規程」と略する)という文書を入手した。ここでは、この文書を踏まえて「呉中モデル」の内容を明らかにし、またこれをもって最高人民法院が主導する制度改革の行方を探ることとする。「呉中規程」は全部で45条あり、その大部分の条文が現行制度を規定している「決定」と最高人民法院が制定した内部文書の内容を踏襲するものであるが、一部の条文は「呉中モデル」特有のものとなっている。この条文の内容と分析は以下の通りである。
有关人民陪审员制度改革的理念和实践的文章
人民参審員の参加する合議体の構成を定めている条文は決定第3条しかない。なお、人民参審員と合議体のその他の成員との意見が分かれた時、人民参審員の意見を評議の記録に記入し、また、人民参審員が当該事件の裁判委員会による検討決定が必要だと思った場合、人民法院の院長に事件の裁判委員会への付議を要求するよう届け出、かつ、その理由を説明し、それを評議の記録に残さなければならない。......
2023-08-14
このような裁判体は人民参審員制度の一種の特殊な形態であると思われる。以上の論述で建国前の人民参審員制度の概観を明らかにさせた。この時期における人民参審員制度は、中国共産党の大路線を理念として、多数の国民を革命に参加させようと動員する政治宣伝の機能を発揮していたと指摘されている[18]。......
2023-08-14
決定第1条は人民参審員は裁判長を担当できないこと以外、裁判官と同等の権限を有する。人民参審員は開廷の三日前までに訴訟資料を全部読まなければならない。第20条は人民陪審員は、合議体の許可を得た上で、裁判官と共同で事案の事実について調査を行うことができる。人民参審員の権限は、訴訟資料の事前閲覧、並びに、当事者への尋問権限、訴訟の調停、事実の調査、という四つの事項に限定されている。......
2023-08-14
それとともに、裁判制度に関する法整備も行われていた。つまり、裁判体は、原則的には、裁判官1人と人民参審員2人で構成される合議体であり、裁判官が裁判長になる。以上は、1931年から1937年までの約7年にわたって中華ソビエト共和国における人民参審員制度の基本構造である。......
2023-08-14
人民参審員の選任資格について、決定第4条と実施意見第2条は、それを定めている。人民参審員を選任する前、裁判に要する人民参審員の人数を算定しなければならない。表3.4選任手続まずは、人民参審員の推薦または自薦である。最後は、任命された人民参審員の名簿を社会に公布することである。......
2023-08-14
つまり、人民参審員へ人民参審員が裁判官の法律か紀律に違反した行動を発見したとき、裁判長あるいは院長、裁判委員会へ意見と建議を提出する権力、および当地の民が抱えた裁判官または裁判業務への意見を収集し人民法院へ提出する権力である。......
2023-08-14
日本では改革後の人民参審員制度に関する研究が盛んではない中で、2012年の葉陵陵「市民の裁判参加に関する比較的考察(3·完):アメリカ、日本及び中国を中心に」[20]および2013年の徐行中国における市民の司法参加システム——人民参審員制度[21]は人民参審員制度の理念·内容·現実を総合的に論じている希少な先行研究である。......
2023-08-14
このことから、人民参審員制度を利用する裁判の大部分が基層人民法院で行われていること、人民法院のレベルが高いほど、制度利用の可能性が低くなること、と言う二つの結論を導くことができる。よって、第一の問題点として挙げられるのは、基層人民法院では社会的影響が大きいとは必ずしも言えない事件の裁判にも人民参審員制度を利用していることである。......
2023-08-14
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