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人民陪审员制度的理念与实践:改革成果

【摘要】:修士号を取った人民参審員は1人だけであり、人民参審員に占める割合は僅かに3.57%である。XJ市と同様に、QX市もまた男性の人民参審員が女性よりも多くなっている。人民参審員の81%を占める女性の職業はその殆どがMH市の市レベルから鎮レベルまでの各婦女聯合会の長である主席、副主席であった。湖北省に存在する三つの基層人民法院の人民参審員の属性は上述のとおりである。

(1)湖北省における人民参審員の属性

XJ市における人民参審員の属性は図4.6と表4.15、表4.16、表4.17で示すとおりである。表より見れば、人民参審員は男性が女性よりも多く、年代層は、40%近い比率を占める30代が最も多くなっている。その他の年代層の比率は大きな差はなく20%前後となっている。このことから、男性は女性より、30代青年は他の年代層の者より、人民参審員として選任されやすい傾向が窺える。

身分において中国共産党党員の人民参審員は、どの政党にも加入しない一般人の人民参審員よりも圧倒的に多く存在する。そのため、中国共産党党員であるという政治的背景が実務で選任される際に、何よりも優先的に考慮される事項であると考えられる。

学歴に関して、学士の学歴を有している者が最も多く、短大卒がその次に多い。修士号を取った人民参審員は1人だけであり、人民参審員に占める割合は僅かに3.57%である。

専門について、法学を専門とする者が16人となり、人民参審員の半分以上を占めている。これに引き続いて経済学、文学、工学を専門とする者が選任されているようである。よって、XJ基層人民法院が人民参審員を選任する際には、法学を専門としており且つ、学士の学歴を有する者を選り好みしていると推測できる。

職種の面から見れば、退職者を除いた大部分の者がXJ市において実権を有する公務員である。例えば、中国共産党委員会のXJ市委員会の組織部副部長と統一戦線工作部の副部長、中国共産主義青年団のXJ市委員会副書記、XJ市にある中華全国総工会の下部組織の工会副主席、また、XJ市教育局の副局長の名前が人民参審員名簿に記されている。それ以外の者は全てXJ市にある国有企業に勤めている管理職員である。更に、6人存在する退職者の人民参審員はその5人が当該人民法院を定年退職した裁判官であり、残り1人は国有農場を定年退職した幹部である。

図4.6 XJ市における人民参審員の性別·年代別[34]

表4.15 XJ市における人民参審員の政治的背景[35] 

表4.16 XJ市における人民参審員の学歴·専門構成[36] 

表4.17 XJ市における人民参審員の職業構成[37]

図4.7と表4.18、表4.19、表4.20はQX市の人民参審員の属性を示している。XJ市と同様に、QX市もまた男性の人民参審員が女性よりも多くなっている。年齢層的には、50代が一番多く、次が40代であり、20代の数は最小である。政治的背景としては、90%近くの人民参審員が中国共産党党員であり、残りが一般人である。中国共産党党員が選任されやすいことはこの事実からも再び証明されていると思われる。

学歴構成はXJ市の状況と異なっており、短大とそれ以下の学歴を有する者が多数派の70.37%の比率を占めている。よって、人民参審員として選任された者の学歴レベルは人民参審員を選任する基層人民法院によりそれぞれ異なっていることが窺える。

図4.7 QX市における人民参審員の性別·年代別[38]

表4.18 QX市における人民参審員の政治的背景[39]

表4.19 QX市における人民参審員の学歴構成[40]

表4.20 QX市における人民参審員の職業構成[41]

職種に関しては、XJ市と状況は同じであり、政府側の公職にある者が46人と、人民参審員の80%以上を占めている。その内、11人が当地にある鎮の[総合治理辦公室]という公的部門の長である主任、副主任であるという事実は注目に値する。なぜならば、当該部門は情報、治安、司法、検察、公安などの部門を主管する中国共産党中央政法委員会の鎮レベルまで広がった末端組織だからである。

なお、6人の退職者の人民参審員の内、4人は当該人民法院を定年退職した裁判官であり、2人は公立学校の教師である。退職した裁判官が、人民参審員として選任された事実はXJ市もQX市も同様である。どの点から見ても、QX市とXJ市の人民参審員はその殆どが国家権力に馴染んでいる者であると結論づけることができる。

XJ市とQX市と隣接するMH市の状況を、図4.8及び表4.21、表4.22、表4.23より見れば、XJ市とQX市とは異なり、MH市の人民参審員は男性よりも女性が圧倒的に多いことがわかる。年代層に関しては、20代、30代、40代の者しかおらず、その半分以上を占めるのが30代である。全体的に見て、MH市の人民参審員はXJ市とQX市のよりも比較的に若い点が指摘できる。

図4.8 MH市における人民参審員の性別·年代別[42]

表4.21 MH市における人民参審員の政治的背景[43]

表4.22 MH市における人民参審員の学歴構成[44]

表4.23 MH市における人民参審員の職業構成[45]

政治的背景では、1人の人民参審員がどの政党にも所属しない一般人であったが、その他は一律に中国共産党に所属する党員であった。また、人民参審員は全て公務員である。人民参審員の81%を占める女性の職業はその殆どがMH市の市レベルから鎮レベルまでの各婦女聯合会の長である主席、副主席であった。この二つの事実から見て、MH市の人民参審員が当該地方の権力層に馴染んでいる程度はXJ市とMH市の人民参審員の状況よりも深いと言える。なお、人民参審員の学歴構成においては、学士の学歴を有している者が圧倒的多数であり、その次に短大卒と続くが、僅かに修士号を取得している者も存在する。

湖北省に存在する三つの基層人民法院の人民参審員の属性は上述のとおりである。総体的に見れば、湖北省の人民参審員の属性は次のようにまとめることができる。まず、男女比については、男性の人民参審員の数が女性よりもやや少なく、年代別の順番においては30代が最も多く、40代、50代、60代と続き、最も低い20代までという構成になっている。身分に関しては、人民参審員の内、90%以上の者が中国共産党党員であり、しかも、80%以上の者は当該地方の実権を握る在職中の公務員である。

学歴構成において、97%超が短大卒以上の学歴を有している。その内、半分以上の者が学士であり、残りが短大卒となる。修士号を取った者は僅かに二人のみである。短大以下の者、つまり、高校卒または中等専門学校卒の者はQX市人民法院の3人しか存在しない。

「実施意見」に基づき、例外として、人民参審員が短大卒以上の学歴を有しなければならないという要件を達成することが明らかに困難である地域、または、年長者でありかつ人望のある者に関しては、学歴要件を適宜緩和することができる。QX市は湖北省の内でも経済の発展レベルと市民の教育レベルが相対的に高い地方であるために、学歴要件を緩和した理由として、要件の達成が明らかに困難である地域と考えることは難しい。そのため、人民参審員に選任された3人が年長者でありかつ人望を有する者であったと理解する方が妥当であろう。しかしながら、人民参審員名簿に記された経歴からみて、3人の内、2人が57歳、残り1人が39歳とあり、どちらも高齢者とは言い難い。そのため、少なくとも、年齢の点では、例外に該当しないと考えられる。彼らの職種は、3人ともそれぞれ鎮レベルの共産党支部書記、鎮政府の幹部、鎮の[総合治理辦公室]の副主任と、すべて当該地方における実力者であった。これを以って、当該地方において人望を有する者であると推測できる。

したがって、実務において年長者であり且つ人望を有するという二つの学歴要件の緩和に関しては、前者に該当をしておらずとも、後者に該当する者であれば、選任されることは可能になったと考えられる。

(2)内モンゴル自治区における人民参審員の属性

図4.9 TZ旗における人民参審員の性別·年代別·民族別[46]

TZ旗[47]基層人民法院における人民参審員の男女比、年代別、民族別の構成に関しては、図4.9で示す通りである。人民参審員の内、男性の比率が女性比よりも大きくなっており、年代別では30代と40代のみで、40代の者が30代の者の2倍となっている。民族別では、モンゴル族よりも漢民族が圧倒的な割合を占めている。

表4.24と表4.25、表4.26で示す通り、TZ旗基層人民法院の人民参審員の内、約三分の二が中国共産党党員であり、残り三分の一がどの政治団体にも所属しない一般人である。学歴構成については、半分が学士、残り半分が短大卒である。また、15人の人民参審員の内、11人が当該地方の公務員であり、残り3人が中学校の教師、1人が国有企業の従業員である。

表4.24 TZ旗における人民参審員の政治的背景[48]

表4.25 TZ旗における人民参審員の学歴構成[49]

表4.26 TZ旗における人民参審員の職業構成[50]

(3)重慶市における人民参審員の属性

重慶市のLF区基層人民法院は筆者が現地調査を行った基層人民法院の内で、上海市のZB区基層人民法院に次いで多くの人民参審員を有する人民法院である。図4.10と表4.27、表4.28、表4.29で示す通り、その属性は上述の基層人民法院の人民参審員の構成よりもやや複雑だと考えられる。

図4.10 LF区における人民参審員の性別·年代別[51]

表4.27 LF区における人民参審員の政治的背景[52]

表4.28 LF区における人民参審員の学歴構成[53]

表4.29 LF区における人民参審員の職業構成[54]

図4.10により、LF区基層人民法院における人民参審員は男性が女性の2倍以上であり、40代と50代の者が人民参審員の主体となっていることがわかる。そして政治的背景については中国共産党党員の者が過半数の52.00%を占めているのに対して、無党派、民主党派の党員の者はそれぞれ18人の36.00%と、6人の12.00%となっている。ちなみに、6人の民主党派の党員の内、2人が政府機関からの退職者、2人が公務員、1人が公立学校の教師、1人が私営企業の従業員である。つまり、民主党派に所属するこの6人も、中国共産党党員の人民参審員と同様に権力層と親しくしている者たちなのである。

LF区における人民参審員の学歴構成については、8割の者が短大卒以上の学歴を有しており、法定の学歴要件を満たしているが、その内、10人は学歴要件の例外となる短大以下の高卒が最終学歴となっている。この10人を年代別に分けると、50代が3人、40代が4人、30代が1人で、60代の者は2人しかいない。学歴要件の例外にあたる年長者であり且つ人望を有するものという緩和要件に関して、後者の要件に該当するか否かは、その人民参審員の名簿に基づいて判断はできないが、10人の内、年長者であるという要件に該当する者は2人しかいない。このことから、LF区基層人民法院は人民参審員選任の際には、学歴要件の例外となる緩和要件を遵守していないと言える。

人民参審員の職業構成については、人民参審員の内、当該地方の権力層に近い公務員、公立病院または学校などの非営利事業体に務める医師と教師、並びに、国有企業の職員は31人と60%以上の割合を占めているのに対して、私営企業主並びに私営企業の職員、退職者、失業者、無職の者を合計しても19人と4割に満たないことが読み取れる。

この点に関して、LF区基層人民法院は上述の各人民法院と比べて、人民参審員の内で国家権力と結びついていない者の比率が38%と相当高い割合を示しているが、公務員を筆頭とする国家権力に近い人民参審員の割合と比べれば未だ低いと言える。

(4)上海市における人民参審員の属性

図4.11及び表4.30、表4.31、表4.32で示す通り、上海市ZB区基層人民法院は筆者が現地調査を行った人民法院の内でも、人民参審員の人数が68人と最も多かった人民法院である。まず、人民参審員の男女比と年代層については表4.40で示されているように、女性が男性よりもやや多くなっているが、基本的に男女比は一対一となっている。年代層は、50代が最多で人民参審員全体の50%近くを占めており、30代が約30%、20代と40代、60代の比率はそれぞれ約10%前後に止まっている。

図4.11 ZB区における人民参審員の性別·年代別[55]

ZB区における人民参審員は中国共産党党員である14歳から28歳の若手エリート青年から成る中国共産党下部組織の中国共産主義青年団の団員および民主党派の党員を加えて51人と75%もの割合を占めているのに対して、何の政治団体にも所属していない者は僅か17人と全体に占める割合は25%に止まっている。学歴の構成については、専門学校卒の1人を除く全ての者が短大以上の学歴を有していることが表4.42から読み取れる。短大卒以上の者の内、7割近くが大学を卒業しており、3割が短大卒、修士号を取った者は僅かに2人である。これに対して、専門学校卒の者は66歳と高齢で、どの政治団体にも所属しておらず、定年退職をした一般の労働者である。総体的に見て、上海市ZB区の人民参審員は学歴のレベルが相当高いことが窺える。

職業の構成に関しては、他に調査を行った人民法院とは異なり、人民参審員の内、退職者の数が最も多く24人となっており、公務員の23人という数字を僅かながら越えている。しかしながら、44人の在職者の内、公務員、学校や病院などの非営利事業体の職員を加えれば、国家権力と結びついている者は36人となり、一般の企業に勤めていた者の約4倍以上にもなっている。このことから、ZB区基層人民法院が人民参審員を選任する際には、余裕のある退職者を優先的に選択するが、それを除けば他の基層人民法院と同様に公務員と非営利事業体の職員を選り好みする傾向にある。

表4.30 ZB区における人民参審員の政治的背景[56]

表4.31 ZB区における人民参審員の学歴構成[57]

表4.32 ZB区における人民参審員の職業構成[58]

④ ZB基層人民法院の人民参審員名簿からその企業が国有企業か私営企業かは読み取れないのである。

(5)広東省における人民参審員の属性

「決定」が実施された2005年5月から現在までにHZ区基層人民法院は、2005年6月、2006年10月、2009年7月の三回に渡り合計48人の人民参審員を選任した。図4.12と表4.33、表4.34、表4.35で示す通り、男性が女性よりもやや多いが、上述の各地の人民参審員の状況とは異なり、男女比がほぼ一対一である。加えて、HZ区における人民参審員は50歳以上の者が圧倒的に多く、その他の年代層の者が占める割合は僅かなものである。

図4.12 HZ区における人民参審員の性別·年代別[59]

表4.33 HZ区における人民参審員の政治的背景[60]

表4.34 HZ区における人民参審員の学歴構成[61]

表4.35 HZ区における人民参審員の職業構成[62]

④ 入手したHZ区基層人民法院の人民参審員の状況に関する統計資料に、企業で務めた者を非営利事業体の職員と一括に[企事業単位](企業と非営利事業体)という項目に算入しているため、その企業は国有か私営か、企業の務め人と非営利事業体での職員がそれぞれ何人かは知ることができない。

人民参審員の政治的背景について、中国共産党党員が28人、一般人が20人と、現地調査を行った人民法院の内でも、一般人の数と中国共産党党員の数との差が最も小さくなっている人民法院が、HZ区基層人民法院であるということが確認できる。更に、公務員である人民参審員は4人と僅か8.33%の割合を占めているのに対して、退職者の数は最も多い36人と全体に占める割合が70%以上にもなっている。企業または非営利事業体に勤めている者が6人おり、参考資料の統計文書からその企業が国有企業か私営企業かは判断することはできないが、たとえその6人がすべて国家権力層と結びついている国有企業と非営利事業体の役員であったとしても、政治権力に近い人民参審員は僅かに10名しかいない。この点から見て、HZ区の人民参審員は上述の他の地域と比較して、政治的権力と距離を置いていると見られる。なお、学歴構成に関しては、短大卒以上の比率が人民参審員の約90%であるのに対して、短大卒以下の学歴を有している者は5人のみである。参考資料からは当該の5人に関する詳細な情報が得られなかったため、この者たちが学歴要件の例外にあたる緩和要件を満たしているか否かについて分析することは叶わなかった。

(6)調査結果のまとめ

人民参審員の年代構成の全国的な状況に関して、第1節にある表4.1で示されているように、人数においては40代が最も多く、その次に30代、50代、20代、60代以上と続いている。20代および60代以上の者が少なく、働き盛りである30代と40代、50代の者が人民参審員の主体となっている。その理由は、30代の者は若くて気力に満ち溢れており、50代の者は30代、40代よりも社会経験が豊富且つ温和であり、それらの内、間に位置する40代の者は気力が旺盛且つ相応の社会経験を有しているためだと考えられる。

筆者が行った現地調査から、この年代構成は各地域の状況によってもそれぞれ異なる構成となることが判明した。具体例を挙げて言えば、湖北省では30代が最も多く、内モンゴル自治区では40代、重慶市と上海市、広東省では、50代が最も多いという数値が確認できる。

人民参審員を選任する際に、湖北省の人民法院は若くて、気力に溢れた者を特に対象とし、重慶市と上海市、広東省の人民法院は、温和で社会経験の豊富な年長者を優先的に選び、内モンゴル自治区の人民法院は、中間に位置するバランスの取れた40代の者を選り好みしたと推測できる。

人民参審員の男女比の全国的な状況に関して、以前に公表された統計資料が存在しなかったため、今回の現地調査で入手した資料に基づいて明らかになった事実を以下に記述することとする。

湖北省のMH市基層人民法院と上海市のZB区基層人民法院の人民参審員は、男性が女性よりも少なかったのに対して、それ以外の五つの基層人民法院では、男性が女性よりも多かった。

しかしながら、各々の基層人民法院の状況から見て、男女比は地域によりそれぞれ異なっている。男女比の差が大きい順に見て行くと、内モンゴル自治区のTZ旗の2.70、重慶市のLF区の2.13、湖北省のQX市の1.70、湖北省のXJ市の1.56、広東省のHZ区の1.17、上海市のZB区の0.85、湖北省のMH市の0.23である。ここから読み取れるのは、経済が発達している広東省のHZ区と上海市のZB区の基層人民法院の人民参審員における男女比のバランスはよく取れているのに対して、経済の発展していない内モンゴル自治区のTZ旗、重慶市のLF区、湖北省のMH市の男女比は、1.00から大きく離れて、非常にアンバランスなものとなっている。このことから、地域の経済発展の度合いが高ければ高いほど、人民参審員として選任された者の男女比のバランスがとれるようになる傾向にあると指摘できる。

ここで男女比のバランスが最も偏っているのは、女性の人民参審員が男性の4倍という数値となっている湖北省のMH市基層人民法院である。人民参審員名簿から見ると、女性の人民参審員は全て当該地方の婦女連合会の主任又は副主任であることが読み取れる。当該人民法院が婦女や未成年者の権利と利益を守ることを責務とした婦女連合会の担当者を人民参審員として選任し、裁判に参加させるのは、家庭内の紛争や未成年者による犯罪の処理を女性が調停などを行う、また、被告人が判決に納得する様に説得する機能を果たすことを期待したためだと考えられる。これらのことを考慮すれば、人民参審員の選任は無作為で行われておらず、人民法院の選り好みによって左右されていると指摘できる。

上述の全ての基層人民法院の人民参審員をまとめて見れば、男性が女性よりやや多く、男女比が約1.22であることが判明した。今度の現地調査は中国の北部、西部、中部、南部、東部に渡って行われており、全国の状況を判断するための資料として有効に利用できる。よって、これを以って全国の人民参審員の男女比として見做すことはできると考える。

学歴構成に関して、全国の人民参審員の内、84%の者が短大卒とそれ以上の学歴を有していることが、表4.2で示されている。筆者が調査を行った各地域において、内モンゴル自治区のTZ旗、湖北省のXJ市とMH市の人民参審員は、全て短大卒とそれ以上の学歴を有しているのに対して、湖北省のQX市、重慶市のLF区、上海市のZB区、広州市のHZ区の人民参審員の内、短大卒以下の者は合計で19人存在している。学歴要件の例外として選任された19人は、広州市の5人に関しては名簿がないので詳細に分析することができなかったが、残りの14人の内で60歳以上の高齢者と言える者は3人のみであることが判明した。したがって、実務においては、当該地方が短大卒以上の学歴という要件の達成が明白に困難な地域でない以上、年長者で人望を有する者でなければならないという要件は、厳格に順守されていないと推測できる。あくまでも、人民法院が人民参審員を選任しているため、短大卒以下の低い学歴の者よりも高学歴の者を選り好みしていることは指摘できる。

人民参審員の政治的背景に関しては、現地調査を行った五つの地域の基層人民法院の人民参審員を全体的に見ると、中国共産党党員が202人、中国共産主義青年団の団員が5人、各民主党派の党員が13人であった。執政党である中国共産党の政治的立場に対して明確に支持を表明している人数が220名であるのに対して、無所属の一般人は70人であった。これをまとめると、人民参審員の内、執政党である共産党に所属あるいは従属する者は、無所属の人と比べて3倍以上も多く存在しているのである。したがって、全国的に、合法的な政治団体に所属する者は無所属の一般人より人民参審員として人民法院に選任されやすいと結論付けることができる。

また、地域毎に、中国共産党党員が人民参審員に占める割合が高い順に見て行けば、湖北省が90.83%、内モンゴル自治区が66.67%、広東省が58.30%、上海市が57.35%、重慶市が52.00%となっている。ここから、中部の湖北省における人民法院では、他の地域における人民法院と比べて、中国共産党党員が一般人より人民参審員として選任されやすいのに対して、重慶市LF区人民法院は、他の基層人民法院より、人民参審員を選任する際に、政治的背景を重視していなかったといえよう。

人民参審員の職種について、全体的に見て行けば、人民参審員の内、公務員が50%以上、退職者が30%以上、国有企業と非営利事業体の職員が約10%、無職と私営事業体で務めた者が最も少なく、僅か5%前後となっている。公務員が直接的に国家権力を握っていること、行政部門からの間接的なコントロールまたは直接的な管理下にある国有企業と非営利事業体の職員が国家権力と緊密に結びついていることを踏まえて、人民参審員の内で国家権力と関係を有する者は約60%以上も存在していると推測できる。これに対して、国家権力と何らの関係もない無職者と私営事業体に勤めている者は10%にも満たない。したがって、国家権力とどのように結びついているかが人民参審員として選任される可能性に強い影響を与えていると考えられる。

総じて言えば、人民参審員は全国の総人口に僅かの一部を占めるエリート層、つまり、党機関または政府機関に属し、高学歴を有している者に限られている。この状況は現地調査を行った2012年に初めて生じているわけではなく、他の統計資料から見れば、早くとも2005年には成都市における人民参審員の内、91.21%の者が党関係者であること、及び、2010年には、重慶市のある中級人民法院が管轄する地域における人民参審員中、行政機関に勤め、行政権を有している者が61.68%を占めていたこと、2011年当時、北京市の基層人民法院では、人民参審員の内、党関係者が占める割合は76.62%に達し、短大卒以上の者が占める割合は93.08%を占めていたことが指摘されている[63]。これから考えれば、人民参審員のエリート化は制度改革を行う2005年から現在にかけてずっと存在すると言われている。