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人民陪审员制度改革:法的根据和实际操作

【摘要】:1980年代から2004年8月28日まで、人民参審員制度の法的根拠は人民法院組織法と三大訴訟法しかなかった。単行法としての決定を公布したのが立法機関の全人大常務委員会であるのに対して、決定の起草をはじめとする今度の制度改革を始動させたのが司法機関の最高人民法院にあたる。

1980年代から2004年8月28日まで、人民参審員制度の法的根拠は人民法院組織法と三大訴訟法しかなかった。2004年8月28日以降、人民法院組織法と民事訴訟法、刑事訴訟法が改正されたが、人民参審員制度を規定した条文は変更されないまま、保留された。さらに、2004年8月28日においては、第10期全人大常務委員会第11回会議では、全文20ヵ条からなる「決定」(2005年5月1日施行)が公布され、今まで人民参審員制度を最も詳しく定めた単行法として成り立った。まとめると、現在において人民法院が人民参審員制度を実施する法的根拠は「決定」に加えて、人民法院組織法(2006年改正)第9条、第37条、第38条と刑事訴訟法(2012年改正)第178条、第179条、第180条、民事訴訟法(2012年改正)第39条、第42条、行政訴訟法(1989年通過)第46条である。

単行法としての「決定」を公布したのが立法機関の全人大常務委員会であるのに対して、「決定」の起草をはじめとする今度の制度改革を始動させたのが司法機関の最高人民法院にあたる。最高人民法院は人民参審員制度の改革について最も積極的な支持者かつ有力なプロモーターだと評されている[1]。1998年12月に行われた全国高級人民法院院長会議では、当時の最高人民法院の院長であった肖楊が人民参審員制度を改革すべきだと呼びかけた。その後、最高人民法院は1999年10月に「人民法院5カ年改革要綱」(以下、第1次改革要綱という)を公表し、人民参審員制度の改革に取り組む姿勢を示した。2000年9月、最高人民法院は、「決定」草案(以下は、旧草案という)を全人大常務委員会へ提出した。しかしながら、当時の全人大常務委員会は、対象事件の範囲や人民参審員の選任方法、日当の支給などの七つの点に関して意見が大きく分かれ、合意に達することができなかったので、この草案の審議を一旦棚上げするように決めた。結局、2002年12月、全人大常務委員会は「決定」草案の審議が立法法第39条に定められた最長の審議期限の二年を越えたことを理由として「決定」草案の審議を中止した。

「決定」草案の審議が中止された直後、最高人民法院は、全国の各級人民法院における人民参審員制度の実施状況に関する調査を行いながら、2000年9月に作った「決定」草案(以下、旧草案という)にある合意に達さなかった内容をめぐって全国人大常務委員会に所属した関係部門や司法部、財政部と意見を交わした上で、2004年2月、再度「決定」草案を作り、再度全人大常務委員会へその新しい「決定」草案(以下、新草案という)を審議するように求めた。

全人大常務委員会の議事録が公表されていないため、新草案の全貌および委員の誰が何をめぐって如何に意見を交わしていたかは究明できないが、わずかの新聞記事[2]によると審議が人民参審員の権限と位置付け、選任方法、対象事件の範囲、選任資格、裁判任務の配置、人民参審員に関する管理、手当の支給という七つの面に焦点をあてて展開したことがわかる。

ところが、2004年6月の全人大常務委員会公報には、2004年4月2日に開かれた第10期全人大常務委員会第8回会議で当時の最高人民法院の副院長である沈徳詠による新草案をめぐる報告が掲載された。その会議において沈徳詠は全国人大人民参審員制度を改革する必要性と新草案の主要な内容を全人大常務委員会へ報告しながら、起草者としての最高人民法院の裁判官が人民参審員の権限、選任方法、裁判任務の配置、人民参審員に関する管理をめぐって交わした意見にも少し言及した。それに、2004年8月10日、8月18日、8月25日において、全人大法律委員会で新草案を三回審議した。全人大法律委員会の長である胡康生、楊景宇は、第二回と第三回の審議が終わった後、すなわち、同年の8月23日、8月26日、委員が提出した新草案に関する修正意見を全人大常務委員会へ報告し、修正した新草案を採決しようと提案した。旧草案も新草案もその文書は公開されていが、ここでは、その報告を踏まえて新草案から三回の審議を経て「決定」までの経緯、すなわち、「決定」の主要な内容をめぐって如何なる意見を交えていたのかが多少窺えると思われる。

人民参審員の権限について、新草案が提出される前、起草者によって三つの主張が提出された。一つ目の意見は、合議体の構成員である人民参審員が事件を裁判する者として、裁判長とならない以外、裁判官と同等の裁判権を有するべきだということであり、二つ目の意見は人民参審員は法律の専門家ではないため、裁判官のように裁判する能力を持たないのを理由として、人民参審員が裁判官を監督する者、つまり監督者に位置付けられるべきだという見解であり、三つ目の意見は、人民参審員が裁判者でも監督者でもあり、裁判権も監督権も有するべきだということである。最後に、最高人民法院は一つ目の意見を採用し、人民参審員が参審する際に、裁判長を担当することができない以外、裁判官と同じ権利を有し、同等の義務を負うとある新草案第十条を設けた。その理由は、人民参審員が裁判に参加することを通して、司法民主を実現し、裁判の公正を確保することをその制度を実施する主要な目的とする以上、人民参審員が裁判に参加し、自分の立場に立ち、裁判官に法律専門家以外の者の意見を聞かせることが判決を正確に下せるようにさせるからである[3]

第一回と第二回の審議が行われた後、全人大法律委員会は、全人大常務委員会の一部のメンバーが提出した人民参審員の性質をより明確に定めるべきだという意見を受け入れ、最高人民法院と検討した上で、新草案第十条に「人民参審員は法定の手続で選任され、法律に従い裁判に参加する公民代表である。」という文言を書き添えた[4]。しかしながら、第三回の審議の時、ある全国人大常務委員会の委員が人民参審員が代表として裁判に参加する者でもなく、選挙で選ばれた者でもないため、公民の代表に位置づけるのは適切ではないと主張したので、最後は、新草案第十条を「人民参審員はこの決定に基づき選任され、法律に従い裁判に参加し、裁判長を担当できない以外、裁判官と同等の権力を有する。」に書き改めた[5]

人民参審員の選任方法に関しても、起草者の意見が選挙によるか任命によるかに二分された。具体的に言えば、当地の人民代表大会で人民代表を選挙すると同時に、選民が被選挙者の中から人民参審員を選挙するという方法および、基層人民法院の院長が候補者を指名してから、同級の人大常務委員会がその候補者を人民参審員に任命する方法である。前者の理由というと、人民法院組織法第37条第1項が人民参審員を選挙で選ぶことを明記しているのみならず、選挙によって人民参審員を選出することこそ、人民参審員制度が民衆から支持を得て、人民参審員が使命感を持するようになることであるのに対して、後者の理由は、最高人民法院による調査で、従来から多数の人民参審員が人民法院によって任命された者で、僅かな人民参審員が選挙で選ばれた者だったため、選挙の選任方法が任命の選任方法よりあまり好まれていないこと、それに、人民法院の院長を除き、副院長も裁判官も院長に指名された上で、同級人大常務委員会に任命される者であるために、人民参審員が人民代表大会で人民代表によって選挙されるようになると、人民参審員の選任方法が人民法院院長を除き全部の裁判官を選任する方法より複雑かつ厳格すぎるようになるので、そこまでの必要はないという考えである[6]。最終的には、後者が新草案に選ばれた。この部分の内容は三回の審議を経ても変わらずに「決定」に採用された。

対象事件の範囲について、新草案第2条と第3条によると、簡易手続で行う事件を除き、刑事·民事·行政事件を問わず、人民参審員制度は第一審の裁判に限られるものの、具体的な事件の範囲は最高人民法院にて制定され、当事者が制度の適用を申請しかつ人民法院がその適用を認可した事件の裁判が人民参審員制度によって行われることが新草案に定められた[7]

しかしながら、第二回審議で、全人大常務委員会の委員は対象事件の範囲が最高人民法院によって決まるという内容に反対し、法律でそれを規定すべきだと主張し、その後、全人大法律委員会は、最高人民法院と検討し、当地の社会的に影響が比較的に大きい事件と当事者による申請がされた事件に限ると合意した[8]。その結果、新草案第二条は「簡易手続訴訟と別の法による事件の訴訟を除き、以下の事件の第一審の裁判は、人民参審員と裁判官から組合わせた合議体により行われる。(一)社会的に影響が比較的に大きい刑事·民事·行政事件、(二)刑事事件の被告人、民事事件の原告と被告、行政事件の原告による申請がされた事件。」と書き改められ、最後、「決定」に採納されるようになった。なぜその内容を変えたかというと、対象事件の範囲を決める権限を最高人民法院を筆頭とする人民法院システムに一任することは、制度の適用が人民法院、ひいては、裁判官の恣意に左右される状態をもたらす危険があるからと指摘されている[9]

人民参審員の選任資格をめぐって、新草案は人民参審員になる者が、中華人民共和国国民であること、選挙権と被選挙権を有すること、満23歳以上であること、憲法を擁護すること、短大卒以上の学歴を有すること、一定の専門知識を有すること、公明正大であること、健康であることとの八つの条件を備えていなければならないと規定していた[10]。ところが、第一回と第二回の審議を行っていたところ、全人大常務委員会の委員は学歴条件を争点に意見が学歴レベルを下げるべきというもの、学歴レベルを上げるべきというもの、学歴レベルを融通の効かない規定にしないほうがいいというものに分かれ、さらに、一部の委員は国籍の条件が選挙権·被選挙権を有する条件と、学歴の条件が一定の専門知識を有する条件と重複していると主張した[11]。その後、第三回の審議の時、新草案に刑事処罰を受けた者および公職を除籍された者が欠格事由であることをすでに規定している以上、選挙権と被選挙権を有することを選任資格にする必要がないとの意見が提出された[12]。最後、「決定」に明記した選任資格は憲法を擁護すること、満23歳以上であること、公明正大であること、健康であること、一般的には短大卒以上の学歴を有することとの五つの条件になった。

人民参審員へ事件裁判の配布、すなわち、具体的な対象事件を確認した後、合議体に参加する人民参審員を選出する方法について、新草案の起草者は全部の人民参審員名簿から無作為抽出で選ぶことおよびそこから人民法院が指定することという二つの意見に分かれたが、妥協の結果として、新草案第十五条は無作為抽出か指定という文言を避け、適当な方法で人民参審員に裁判業務を手配しなければならないこと、それに、一名の人民参審員が毎年参加する事件は10件を超えてはならないことを規定していた[13]。にもかかわらず、この新草案が全人大常務委員会への審議に提出された後、一部の委員は、人民法院、ひいては、業務配布を担当する裁判官の恣意判断を避けるために、無作為抽出のほうがいいと主張した。その意見を受け、全人大法律委員会がその内容を「基層人民法院で行った事件の裁判に参加する人民参審員が人民参審員名簿から無作為抽出で確認される。中級人民法院、高級人民法院で行った事件の裁判に参加する人民参審員は所在する町の基層人民法院により人民参審員名簿から無作為抽出で確認される。」と書き換えた[14]

人民参審員の研修·考査に関しては、最高人民法院の起草者が研修と考査の内容ではなく、それを担当する機関について意見が一致しなかったのである[15]。具体的に言えば、一つは人民参審員が参加する裁判が行われた場所が人民法院で、しかも、他の部門より人民参審員の状況を把握するのが人民法院であることを理由として人民参審員の研修と考査を担当するのは人民法院にほかならないという意見であり、もう一つは、人民参審員の研修と考査は司法行政事務に属するために、それを背負うのは人民法院ではなく司法行政部門のはずだという見解であり、三つ目は人民参審員が裁判官でもなく、司法行政部門の役員でもない者であるが故に、人民参審員への研修や考査を履行する職務は、人民法院のみでなく、司法行政部門のみでもなく、人民法院と司法行政部門、つまり、同級人民政府に属する司法局と合同で担われるべきだという考えである。その後、三つ目の意見が新草案に吸収され、第十六条で定められ、「決定」に書き込まれた。

人民参審員への手当についても、新草案の起草者の意見は一致したのである。定職のない人民参審員には当地の平均給与相当の補助金を出勤日数に応じて支給するのに対して、有職者にはその補助金を支給せず、所属する職場から減給されるのを禁止するという手当に関する内容が新草案に明記され、その後、第二回の審議を行った時、人民参審員へ交通費と食費等の裁判のために発生した費用を補助するべきだという意見が一部の委員により挙げられ、「決定」に書き込まれた[16]。ここから、人民参審員へ支給する補助金が人民法院が同級人民政府からもらった財政名目の一つであるようになっている。

以上は現行人民参審員制度が依拠する単行法である「決定」の立法経緯である。これから見ると、「決定」の立法者は人民参審員に裁判官と殆ど同等の権力を賦与する一方、人民参審員を人民法院および裁判官から独立する立場に立たせようとしていたと言える。ところで、人民法院組織法および刑事訴訟法、民事訴訟法、行政訴訟法には人民参審員制度に関わる条文も定められているが、「決定」の公布によってその条文の内容は刷新された。

表3.1は現行の人民法院組織法と刑事訴訟法、民事訴訟法、行政訴訟法にある人民参審員制度に関わる条文の内容を簡潔にまとめたものである。その内容は対象事件の範囲および人民参審員の権限、選任資格·方法、評議方法、手当に限っている。表3.2は人民参審員制度全般に関する網羅的な単行法である「決定」の条文とそれに対応する内容である。

表3.1 人民法院組織法と三大訴訟法における規定

表3.2 「決定」の規定とその内容

対象事件の範囲に関する規定を見てみよう。人民法院組織法第9条第二項は「第一審事件の裁判は、裁判官のみから構成した合議体または人民参審員と裁判官と構成した合議体によって行われる。簡単な民事事件、軽微な刑事事件と法律に別段の規定がある場合、裁判官1人の独任裁判が可。」と規定している。その条文から見ると、人民参審員制度の対象事件が簡単な民事事件、軽微な刑事事件と法律に別段の規定がある場合を除き、民事事件か刑事事件か行政事件かを問わず全ての第一審事件が対象事件の範囲に含まれていると理解していい。つまり、その条文に基づき、人民参審員が参加できないのは簡単な民事事件、軽微な刑事事件と法律に別段の規定に従い適用しない事件の裁判である。

そして、刑事訴訟法第178条第1項は、「基層人民法院、中級人民法院での第一審事件の裁判は、裁判官3人から構成した合議体または裁判官と人民参審員3人から構成した合議体により行われる。しかしながら、基層人民法院で簡易手続で行う裁判は裁判官1人によってもいい。」と定め、同条の第2項は、「高級人民法院、最高人民法院での第一審事件の裁判は、3人から7人までの裁判官から構成した合議体または3人から7人までの人民参審員と裁判官から構成した合議体により行われる。」と規定している。その条文に従い、刑事訴訟の場合、基層人民法院で簡易手続で行う事件の裁判を除き、人民参審員は全ての第一審刑事事件の裁判に参加することができる。しかし、この条文に記す基層人民法院で簡易手続で行う事件の範囲は、前述の人民法院組織法第9条に書かれた軽微な刑事事件の範囲と合致するわけではない。基層人民法院で簡易手続で行う事件は、必ず軽微な刑事事件のはずであるが、軽微な刑事事件は、決して基層人民法院で簡易手続で行う事件とは言えない。換言すれば、軽微な刑事事件の範囲は基層人民法院で簡易手続で行う事件を含んでいるのである。すなわち、刑事訴訟の場合、刑事訴訟法が定めた対象事件の範囲が人民法院組織法により決められた範囲より広いということである。

同じ状況が民事訴訟の場合でもある。民事訴訟法第39条は、「第一審民事事件の裁判は、裁判官と人民参審員と共に構成した合議体または裁判官のみから構成した合議体で行う。……簡易手続を適用する民事事件の裁判は、裁判官1人で行う。」と定めている。それに基づき、民事訴訟の場合、簡易手続を適用する民事事件を除き、全ての第一審民事事件が人民参審員制度の対象事件だと言っていいのである。したがって、民事訴訟の場合、対象事件から除外する事件は、人民法院組織法の条文に従えば、簡単な民事事件であり、民事訴訟法の条文に基づくと、簡易手続を適用する民事事件である。よって、刑事訴訟の場合と同じく、民事訴訟においても、民事訴訟法が規定した対象事件の範囲は、人民法院組織法で定めた範囲より広いのである。

ところで、もしも「行政事件の裁判は、裁判官から構成した合議体あるいは人民参審員と裁判官と共に構成した合議体で行う。」とある行政訴訟法第46条に基づけば、行政訴訟の場合、第一審か第二審かを問わず、簡単な事件か複雑な事件かも問わず、全ての行政事件の裁判では人民参審員制度を適用することができると言える。が、人民法院組織法第9条に従えば、刑事·民事·行政事件を問わず、人民参審員制度を適用する事件は第一審事件に限られているのである。行政訴訟法の立法者がその行政事件の裁判は第一審事件の裁判だと想定していたかもしれないが、その条文のみを見れば、第一審事件に限っていると読み取れないのである。したがって、対象事件の範囲について、行政訴訟法の規定は人民法院組織法の規定と全く異なっていると思われる。

上述したとおり、人民参審員制度の対象事件に関わって、人民法院組織法および三大訴訟法の規定はお互いに合致していない状態になっていると思われる。それに対して、「決定」第2条は、明確な文言で簡易手続訴訟と法律に別段の規定がある場合を除き、社会的に影響が比較的に大きい刑事·民事·行政事件および刑事事件の被告人、民事事件の原告と被告、行政事件の原告による申請がある事件の第一審の裁判が人民参審員制度で行われなければならないとしている。したがって、対象事件の範囲をめぐって、「決定」第2条によって統一された規定が設けられるようになっているといえる。

人民参審員の権限については、表3.1で示したとおり、行政訴訟法には人民参審員の権限に関わる条文が設けられていないが、人民法院組織法第37条第2項と刑事訴訟法第178条第3項、民事訴訟法第39条第3項は同じく「人民参審員は、裁判に参加する時、裁判官と同等の権限を有し、同等の義務を負う。」と定めている。それに、人民法院組織法第9条第3項も、刑事訴訟法第178条第6項も、合議体の長である裁判長になる者は裁判官でなければならないと規定している。それに対して、「人民参審が本法に基づき選任され、法律に従い裁判に参加し、裁判長を担任できないこと以外、裁判官と同様の権利を有する。」とある「決定」第1条はその人民法院組織法と刑事訴訟法、民事訴訟法にある関係条文の内容をまとめたものだと考えられる。しかも、「人民参審員が合議体に参加し、事件を裁判するとき、独立して、事実認定と法律適用に関して表決権を行使する。合議体の表決は多数決の原則で行われる。人民参審員が合議体の他の構成員と異なる意見を持する場合、その意見を議事録に記入しなければならない。必要がある場合、人民参審員は院長に裁判委員会への付議を要求することができる。」とある「決定」第11条に基づき、人民参審員の権限の具体的な内容が事実認定、法の適用につき独立した議決権および裁判委員会への付議を申請する権力に当たると思われる。

人民参審員の選任資格と選任方法に関して、刑事訴訟法も民事訴訟法も行政訴訟法もそれを規定する条文を設けていないのに対して、人民法院組織法第37条第1項は「政治権利が剥奪された者を除き、選挙権と被選挙権を有し、満23歳以上の公民が、人民参審員として選挙される。」と定めている。その条文に基づけば、選任資格は政治権利[17]が剥奪された者でないこと、選挙権と被選挙権を有すること、満23歳以上であることと言う三つの条件しかないのであり、選任方法は選挙ということだとまとめられる。

にもかかわらず、「決定」第4条によると人民参審員になる者が憲法を擁護すること、満23歳以上であること、公明正大であること、健康であることという四つの一般条件、そして、一般的に短大卒以上の学歴を有するという学歴条件を満足しなければならないのである。しかも、「決定」第7条と第8条に基づき、人民参審員は基層人民法院と基層人民政府の司法行政機関による審査手続きおよび同級の人大常務委員会による任命手続を経た者であるから、人民参審員の選任には選挙でなく任命制が適用されている。したがって、「決定」は人民法院組織法より厳しい選任資格を設け、それと全く異なる選任方法を設置していると思われる。

評議方法について、表3.1で示した通り、人民法院組織法と行政訴訟法は規定がないのに対して、刑事訴訟法と民事訴訟法では評議の方法を定めている。刑事訴訟法第179条と民事訴訟法第42条は、同様に多数決の評議原則を決めている。

しかも、刑事訴訟の場合、刑事訴訟法第180条に基づき、複雑かつ重大な事件を裁判する時、もしも判断を決めかねるならば、合議体が院長に裁判委員会への付議を求め、裁判委員会の判断に従わなければならないようになっている。つまり、合議体が多数の意見に達することができない場合において最終の判断を裁判委員会に仰ぐのである。

「決定」第11条は、刑事訴訟法第179条と民事訴訟法42条が規定する多数決の評議原則を踏襲した外、多数決が得られない場合、合議体だけでなく人民参審員個人にも院長に裁判委員会への付議を請求する権限を賦与している。

人民参審員へ支給する手当をめぐって、三大訴訟法はそれを規定していないが、人民法院組織法第38条は、裁判に参加する期間中、有職者の人民参審員は所属する職場から給料をもらい、定職のない人民参審員は人民法院から適切な補助金をもらうように定めている。しかし、人民参審員が事件を裁判するために発生した交通費や食費などがどこから支払われるべきなのか、そして、どのぐらいの補助金が適切なものであるかは、人民法院組織法では答えられないのに対して、「決定」第18条および第19条は、それを詳しく定めている。

以上は、現行の人民参審員制度の対象事件、人民参審員の権限、選任資格·手続、評議方法、手当の支給に関する法的根拠に関わる整理と分析である。また、表3.2で示すとおり、人民参審員の義務、任期、合議体の構成、事件配点、人民参審員の研修·考査について、人民法院組織法と三大訴訟法は全く規定していないが、単行法である「決定」はそれを定める条文を整えている。総じて言えば、人民参審員制度を実施するにあたり、その制度の一部の内容だけを大まかに定めた人民法院組織法と三大訴訟法より、制度全般を網羅的に詳しく決めた「決定」こそ準拠される意味がある法的根拠だと思われる。しかも、法律の特別規定がその一般規定より優先的に適用されることを規定している立法法第83条に基づき、単行法である「決定」が、そもそも人民法院組織法および三大訴訟法にある人民参審員制度に関わる条文より優先的に適用されるべき法律である。